私と純日記

ただの個人的な私の話

金と人の間に愛はあるんか?

今日、あるチェーン店の回転寿司屋に行った。コロナ前によく行っており、仕事で頑張ったあとのご褒美として寿司を楽しんで帰るということがよくあった。コロナ明けで初めて、そして数年ぶりに行った。

この数年のうちに回転寿司屋の効率化がかなり進んだ実感はあったが、その店も例外なく効率化が進んだ店だった。人に話しかけず食事が済むのはありがたく思っている反面、効率化のせいで店に入ってから出るまで、ずっと気持ちがせかせかとしていて落ち着かなかった。受付の発券の列が狭くてどこに並んでいいかわからないとか、一人席はパーソナルスペースが電車の席くらいしかなく、荷物置き場に荷物入りきらないとか、そういう体験が積み重なるとトータルで嫌な印象しか残らなくなる。もっとメニューをゆっくりみていろいろな寿司を食べたかったが、ご飯をゆっくり食べるための環境が整わないために腹6分目くらいに留めて店を出た。当分このチェーン店での食事はいいや、となってしまった。

 

効率化の果てに何が残ったのだろうか、と思う。そう思ったけど、すぐに、その回転寿司屋に金が残ったじゃないか、と結論づける。効率化の果てに人員削減に成功し、スペースを削減することで収容人数を増やし、客にゆっくりさせすぎないことで回転率が上がるだろう。そうやって、コスト削減、業務効率化、回転率UPやスペースの見直しによる客入りの改善、などが金となり成果となって「正解」となってゆく。

一方で、そういう類の効率化されたことで私という「顧客」は、客単価減、顧客体験の満足度も下がり、当面離反顧客となった。どうせ私が離反顧客となったところで、「日曜日の売上」に響くほどのことでもない、炎上するほどのことでもない、例え炎上したとしても回転寿司屋はつぶれない、存続に関わるほどのことなどめったに起きない、資本主義は、世界は、終わらない。私も嫌な出来事など忘れていつか、その回転寿司屋に金を落とす日が来るだろう。人の気持ちが本格的に介在するわけもない。

仕事柄*1、これくらいのコスト投下をすればこれくらいのユーザーに買わせられるとか、これくらいのコストだけでユーザーは動くだろうから問題ないとか、そういう話ばかりが耳に入ってくる。そのたびに、一人ひとりの生活や営みのことをなんだと思っているんだ、と複雑な気持ちになり気が散る。

 

私が唯一職業選択の上で大事にしているのが「自分の関わるサービスのことを自分が一番愛そう」というテーマだ。稼いだ金を自分の関わるサービスに定期的に使い「お客様」としての気持ちを持ち続けようと努力をしている*2

サービスに金を落とすとき、そこには人間の葛藤がある。当たり前だが無限に金があるわけではないため、可処分所得をどう割り振るかは、生活に直結する問題である。眼の前に欲しいものがあるが、それを買っていいのか、他に使うべき先があるのではないか、自分を甘やかしているだけではないのか、あの支払いに響くような買い物ではないだろうか、この金を使うことで生活は、人生は…と、そんな大きな話にすらなる。日々の売上には、お客さん一人ひとりの意思決定の先にある…のだけれど、自分が一生稼げるはずもない額の売上が立っていくと、一人ひとりのお客様の意思決定プロセスにおける葛藤など霞んでいく。

いちいち気が散って、割り切れない自分は職場で必要とされているのか?とすら思う。ただ、お客さんをユーザーと言って、なんとなく「正解」っぽい言葉で相応なことを言っていると、みんなと同じになれた気がするが虚しさがピッタリついてくる。誰よりも割り切れない思いを抱えている私もお客さんなのだから、矛盾がついて回るのは当たり前なのかもしれないが。

 

ただ、そういう虚しさは、人間同士が集まって密にコミュニケーションを取るほど増してくる。この虚しさは私だけが持っているとも言い切れず、優しい同僚ほど抱えきれない虚しさがつきまとっているように感じる*3。表面上は何食わぬ顔してドライな話をしているが、金より人に興味がある人間ほど、虚しさがついて回る。

だが「割り切れる人間は好かんのだ」という態度を取っていると虚しさは広がっていき、本来は調和を好む優しい人間も無意識に分断を望もうとする。今の職場はそういう雰囲気が漂っている。

どれが正しくてどれが間違っている、と区切りがわかりやすくある問題でもない。問題を挙げればきりがなく、複雑に絡み合っている。もっと腹を割って話が出来たら少しだけ腹落ちするだろうか、とも思うが、腹を割った先の損得勘定で採算が取れなければ推奨されないのだろうとも思う。というかそもそも、誰とどんな腹を割った話をすべきなのかも、もうよくわからない。それくらい、この不満や葛藤を整理していくのは難しい。

金は人の気持ちが動いた結果集まってくる、というくらいコンパクトな言葉で片付けられるなら楽なのに、そうもいかなくて無駄な葛藤と戦っている毎日。少しつかれたので明日は半休を取ってから出勤する。

*1:あるネットサービスのマーケティング職をしている。人によっては生きる上で必要ない商材だし、人によっては自身のプライドに関わる、みたいな商材

*2:かっこよく言ってるようだが、関心がないことにとことん関心がなくひとつも行動出来ないため、これくらいのパッションを掲げていないと銭を稼げないただの頑固野郎なだけ

*3:ここでいう「優しい」は、人間に興味があり、損得だけで割り切れず、人の心の類を重んじる人間という意味